床屋といえばフランス国旗のトリコロールではありませんが、赤、白、青の3色のくるくる看板を思い浮かべます。最近その3色の看板が店頭から減ってきた気がします。
ヨーロッパでも日本同様に店頭に立っていたり、壁からまるで街灯のように張り出していたりと、時々3色看板を目にしていました。もっともお店は通りに面しているので看板がなくてもウィンドウ越しに床屋だとすぐにわかりました。
この時がそうでした。そろそろ出発しようかと通りを歩いていたらウィンドウ越しに床屋が確認できたのです。店内のオジサン主人とチラッと目があった気もしました。前日、ユースホステルでシャワーを浴びながら洗髪していたので、髪はボサボサでも嫌な気にさせないだろうとも思いました。そこで店先に自転車を置くと、
「ボンジュール!!」
「ボンジュール?……」
さて、元気よく入ったものの「できるだけ短くカットして欲しい」と伝えたい言葉が出てきません。例によってヘンテコな言葉とジェスチャーで主人に伝えるしかありません。
「えーと? カット、ベリーショート。シルブプレ」
大きく開いた親指と人差し指の幅を段々とせばめて、手のひらで後頭部をなでます。
「カット、ボクー。ベリーショート。ラスト、ショート。えーと……?? バリカン、バリカン!! バリカン、シルブプレ」
「バリカン?」
「バリカン、コンポンパ?」
「??……ウイ」
やっとのこと主人にわかってもえたようでした。散髪と洗髪で日本円にして約1,500円。スイスの床屋より安かったと思います。
私が海外で床屋に行ったのは3回だけですが、いずれも髭剃りはしてくれませんでした。日本のように散髪のコースに髭剃りは入っていないのです。髭剃りをして欲しい場合は別料金で頼むことになります。洗髪も別料金になる場合もあります。
3、4年ほど前のことです。行きつけの床屋で急に気になって聞いたことがあります。
「今日はどうします?」
「夏向きにいつもより短くしてくれる。バリカンで刈り上げちゃっていいから。そういえばさぁ、バリカンって感じからすると英語じゃないよね。何語なの?」
「バリカンですか? えー、何語なんだろ?」
お店の人も知らないようです。そこで手の空いていた若いスタッフがネットで調べてくれました。
日本に初めて西洋から理髪道具がやって来た時は、いわゆるバリカンの名前を誰も知りませんでした。バリカンの入った箱にナンチャラカンチャラとローマ字であったのがバリカンの文字、それがフランスの理髪道具のメーカー名であり、創始者バリカンの名前でもあったのです。
シェルブールの床屋のバリカンがバリカン社製かどうかわかりませんが、少なくとも主人は私が連呼したバリカンの意味を理解して短くカットしてくれのだと思います。たまたまフランスでバリカンを連呼しましたが、それが正解だったのです。ちなみにバリカンをバリカンと呼んでいるのは日本と韓国だけだそうです。
コミュニケーション能力が抜群だね。語源由来辞典より引用↓
http://gogen-allguide.com/ha/barikan.html
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