陸地側からモン・サン・ミッシェルへと一本の道が緩やかにカーブして続いています。周辺の潮がだいぶ引いてきました。2キロほど走るとモン・サン・ミッシェルの真下の駐車場に突き当たります。駐車場の隅に自転車を止め、入口「王の門」をくぐるといよいよ修道院への登りの始まりです。
振り返ると先ほどにも増して潮が引いてきたのがわかります。
目指す修道院はこの奥、さらに登りが続きます。修道院の尖塔のサキッポだけ見えています。
Grand Rue(グランド・リュ=大通り)と呼ばれるメインストリートです。昔は巡礼者、そして今は観光客でいっぱいです。狭い大通り(?)に土産物屋、レストラン、カフェがずらっと並んでいます。ホテルも何軒か確認できます。
最後のきつい階段を上ると修道院に出ました。思いのほか中は閑散としています。当時の観光案内に島の住人は180人とありますが、修道士や修道尼の人数は少なかったようです。住民の多くは土産物屋や飲食店を始めホテル、学校、役所、郵便局等で働いている人たちではなかったでしょうか。
駐車場へ戻る途中に写真を一枚。雲の切れ間から日が射し、すっかり潮が引いた後の砂地が黄金色に輝いていました。道がなかった頃、巡礼者たちは潮の引いたこの砂地を歩いて修道院を目指したのだろうと想像できます。
モン・サン・ミッシェルの全景です。周囲1キロにも満たない小さな島ですけど、ドッシリとしたたたずまいはそう感じさせません。
島への道が通じたことで潮の流れがさえぎられ、120年の間に2mもの砂が周囲に溜まってしまったそうです。このままでは完全に陸続きになってしまうということで、EU、フランス政府、地元行政による再開発プロジェクトが立ち上げられました。
10年という歳月と300億円以上の経費をかけ、モン・サン・ミッシェル近くに流れ込む河川の整備など周辺環境を整えていきました。中でも一番大きなプロジェクトは島へと続く道路を分断し、そのかわりに橋を架けることで潮の流れを復活させようとしたことでした。
全景写真にある突き当たりの両サイドが駐車場です。現在、この駐車場は取り払われ、2015年に完成した橋がかかっています。今では陸地側から橋の手前まで観光客用のシャトルバスが運行しています。そして計算通り島の周りの潮流が復活し、流砂が溜まらなくなりました。海に浮かぶ奇巌城モン・サン・ミッシェルが復活する日は近いかもしれません
最後に振り返って「羊とモン・サン・ミッシェル」の一枚です。この時は単に[羊がたくさんいるなぁ]と思って撮ったのですが、このあたりの羊は塩分を含んだ草を食べているので美味しいとのことです。本当でしょうか。