台東からさらに北上、台湾を代表する観光地、太魯閣峡谷を目指します。9号線は台東、花蓮(ファーレン)間を鉄道と並走する形で花東縦谷と呼ばれる山あいの盆地というか平地の間を行きます。その間約200キロは花東公路と呼ばれ、その周辺に漢人と原住民が約半々ずつ暮らしています。日本統治期にはこの花東縦谷は中仙道平野と呼ばれていました。
前述のように16世紀末にポルトガル船により台湾島が発見されたころは流れ着いた漢人や寄港する倭寇をのぞくと原住民だけが島で暮らしていました。彼らの祖先は東南アジアからメラネシア、ミクロネシアと広範囲に分布するマレー・ポリネシア系といわれています。
「呉鳳廟と呉鳳伝説」では首狩り族のツオウ族について記しましたが、今でも山岳地帯から東部海岸にかけて多くの原住民の人たちが暮らしています。
台東周辺にプユマ族、花東縦谷とその東の海岸山脈から海にかけては15万人以上と最大のアミ族、左手の中央山脈には日本統治に最後まで抵抗した首狩り族でもあるブヌン族、その北には約10万人とアミ族に次ぐタイヤル族など、台湾政府は16部族を認めており、人数にして計40~50万人となっています。申告しない人や漢人との混血で全てを把握できないようです。
[アップ・ダウンも少ないし、この道で正解だな]9号線花東公路は幹線道路にしては交通量もさほど多くなく走りやすい感じでした。
ホテルのオヤジさんから「ミチダイジョブ、オーケーネ。カレンマデイケルヨ」と海沿いの道でも花蓮まで行けると聞いていたのですが、これまで多くの海に面した監視所を見てきた私にしてみれば海岸線を走る選択肢はありませんでした。それというのも、ミリタリー・ストップだけは避けたかったからです。
これは休憩時に撮った一枚です。中央山脈の山並みをバックに茶畑とその先にある檳榔(びんろう)樹の並木です。手前は野生化したポインセチアでしょうか。台湾らしい(?)風景なので気に入っています。
檳榔の実を葉で包み少量の石灰と一緒に口に入れ、噛むことによって噛み煙草と同じ作用があり、私は台湾の男性がよく噛んでいるのを見かけました。ただし実と石灰が反応して口の周りが真っ赤になるので、初めて見た時「どうしちゃったの?!」とビックリしました。噛み終わると「ペッ、ペッ」とあたり構わず吐き出すのがどうにも??……でした。ところが最近では檳榔の実を買うと紙コップとティッシュが付いてくるそうです。やっぱり、マナーを守りましょうということですね。