居心地がよかったせいで、10日間もMさん宅でノンビリしてしまいました。AIちゃんのタップダンスの発表会を観た翌日に出発することにしました。
「すっかりお世話になりっぱなしで、本当にありがとうございました」
「うん。いいから、いいから。H君もこの先気を付けてね。それから、これ少しだけど餞別に」
そう言うとMさんは封筒を差し出しました。
「餞別って。これ以上甘えられませんから」
すると、横から奥さんが
「遠慮なんかしないの」
「でも……」
「いいから、もらっときなさい」
「そうですか、なら遠慮なくいただきます。ありがとうございます」
そして最後に、
「AIちゃん、さよなら。元気でね」
「うん。おじさんも元気でね」
3人でいつまでも見送ってくれました。
封筒の中には100$紙幣が。私は、この気持ちのこもった100$紙幣を大切にしまいました。
後日談
帰国後、Mさんにお礼の手紙を出しました。
〔その節は大変お世話なり、ありがとうございました。Mさんにいただいた100$は御守りとして、パスポートに忍ばせて旅を続けました。そのおかげで無事帰ることができました。今度はMさんの御守りにしてください〕
Mさんからの返信には、
〔無事に帰られて何よりです。確かに受け取りました。その後、私は日本料理店をオープンし、いまでは従業員も3人に増え、やっと軌道に乗って来たところです〕