初日は<4月25日橋>を渡ってスペインからきた道を戻る形になります。二人の走るペースはほぼ同じ、W君は初めての二人自転車旅にテンションが上がっているようで鼻唄まじりでペダルを踏んでいました。
さらにスペインに向けて南下を続けていくと、田園風景のなかにポルトガル特産のコルクがしの畑(林)が広がって見えてきました。ポルトガルのコルク生産量は世界の30%です。
幸い、真冬だというのに、あまり寒さを感じずに走ることができました。
私は前年K君と二人でカナダを走って経験済みですが、大きく変わったのが晩飯の仕込みです。一人で一つ計二つコンロがありますから、ご飯を炊いてるあいだにもう一方のコンロで野菜や魚を煮込んだり、ステーキを焼いたりできます。
料理のバリエーションが格段に増えるのです。大喜びのW君は張り切ってメニューを考えてくれました。
リスボンをたって4日目、ポルトガル南端の港町 Faro(ファーロ)に着きました。スペインとの国境まで、あと60キロほどです。リスボン出発後初めてペンションに泊まることにしました。
アルガルベ地方の中心ファーロは大西洋を望むリゾート地としてヨーロッパでは知られています。最近、日本では、なでしこジャパンが出場する女子サッカー国際大会アルガルベカップの開催地として知られるようになりました。
晩飯前に、W君と海に出てみました。目の前には砂浜ではなく、大きなラグーン(潟)が広がっています。砂浜はこのラグーンの先、まだかなり距離がありそうです。ファーロの街の西には飛行場があり、離着陸する飛行機が大西洋に沈む夕陽に照らされ、光って見えました。
「砂浜までは、だいぶありそうだよ。ちょっと行けそうにないな」
「いいですよ、ここで。それよりHさん、久々の走りで疲れてんじゃないですか? スペインも近いし、あした1日ファーロでノンビリしませんか?」
「なんだよ、疲れてんのはW君の方じゃないの? いいよ別に。洗濯物も溜まってるし」
スペインとの国境までは1日あれば楽に行ける距離です。沈む夕陽を見ながら [もう1日ポルトガルにいたい] 二人とも同じことを思っていたのかも知れません。
私は自転車に乗るのが好きで、海外を走り出した自転車旅行者です。一方のW君は海外(ノルウェー)での農業研修を終え、帰国するまでの間に狭い(?)ヨーロッパを旅行するための手段として、自転車を選んだという違いがあります。それでも自転車旅行の楽しさ、しんどさを感じるのはともに同じです。
W君が日本へ帰国する4月まで、二人で一緒にどこまで走れるのかわかりませんが、何事もなく無事に走り終えたいと思っていました。ましてや、めざすはアフリカの地、きっとW君も同様に考えていたと思います。