モロッコの東端の街ウジダはこの地方の中心です。東に15キロほど行けばもうアルジェリアとの国境、鉄道も道路もアルジェリア側に通じています。街は旧市街と新市街に別れており、私達は旧市街で見つけた安宿に泊まることにしました。
ウジダの街での目的はアルジェリアの入国ビザ。翌日早速アルジェリアの出先機関に行くことにしました。
驚きの闇レート
出先機関の住所は、リスボンのアルジェリア大使館で教えてもらっています。それを頼りに、ツーリスト・インフォメーションか役所もしくはパスポート・チェックに現れた警察官にでも聞くつもりです。街に出るといつものことですが、いかにも旅行者の私達にすぐ声がかかりました。
「チェンジ・マネー?」
「サバ! ジャポネ?」
「アルジェリアに行くならチェンジ・マネー!」
「W君、参考のためにちょっとレートを聞いてみようか?」
「ええ、そうですね」
両替のアンチャンがメモってくれたドルとアルジェリア・ディナールのレートは、
・100$=450Dr(正規レート)
・100$=1,600Dr(闇レート)
何と3倍以上の差があります。
「シュクラン。よく分かった。両替する時は頼むよ。ところで、アルジェリアの事務所へ行きたいんだけど、どこかな?」
「アルジェリアの事務所? 多分アッチだ」
「歩いて、どのくらかかる?」
「10分か15分だよ」
アンチャンの指差す方へとりあえず行ってみることにしました。ウジダは10世紀に開けた古い街ですが、街全体から受ける感じは、今までの街の様子と違い、新しい雰囲気です。しばらくすると10才くらいの男の子が私達の行く手をふさぐように、
「サバ! ムッシュ。ジャポネ?」
「ウイ」
「モナミ、モナミ。Y! ジャポネ」
私の袖を引っ張りながら、どこかへ連れて行こうとしています。
「Hさん。モナミって、フランス語で友達っていう意味ですよ。Yって日本人の苗字ですかね?」
「多分そうだろう。ついていってみるか? 大丈夫だろ」
「Y? ジャポネ?」
「ウイ」