公安局を出て遅めの昼飯をとると、サレス氏のお墨付きもあって(?)、私たちは気分上々で、さっそくチュニスの街を散策しました。
旧市街メディナはイスラムの世界ですが、それでも他の国のメディナに比べれば整然として見えます。
一方、〈フランス門〉の東側、チュニスの新市街はモロッコやアルジェリアの都市とちょっと雰囲気が違い、街並みがどことなくヨーロッパを感じさせます。
私がこれまで走ってきたのはイギリス、スペイン、ポルトガルだけですが、ノルウェーから走ってきたW君も同じ印象を持ったようです。
何より驚いたのが女性の服装で、皆スカートをはいています。イスラム独特の足元まで隠れる長衣はおろか、ベールで顔をおおう人も見かけません。なかにはスラックスで闊歩する女性も。年齢層を問わず、多くのカップルも目につきます。
独立後、チュニジアはブルギバ大統領により欧米寄り路線を歩んできたようです。象徴的なのが女性に対する配慮ではないでしょうか。
それは〈一夫多妻制の廃止〉〈公共の場でのベールの禁止〉のほか、休日〈女性の日〉を設けるなどにみられます。ベールを始めとする女性の衣装に関してはコーランの教えもあり、他のイスラム国では、また違った考えがあります。
翌日から私たちは自転車で近郊の観光スポットへ出かけました。
まずはチュニス市内の北西に位置する〈バルドー国立博物館〉へ。
駐車場にはヨーロッパの観光客を乗せたバスが目につきます。館内には古代ギリシャの遺物を始めとして数多くの展示品があります。
なかでも有名なのが、ローマ時代のモザイク装飾品のようです。観光客の多さに圧倒され、見学を終えて館内を出ると、春を感じる陽射しのもとで二人でしばらく日なたぼっこ。
バルドー国立博物館テロ事件
チュニス観光の目玉、人気の観光スポットのバルドー国立博物館ですが、2015年3月に観光客を狙った銃撃・人質事件が起こりました。
イスラム過激派のチュニジア人二人が博物館前で外国人観光客に向かって銃を乱射し、人質をとって立てこもりました。数時間後に犯人は現場で殺害されますが、警官一人のほか、観光客の犠牲者20人以上、加えて多数の負傷者もでました。残念なことに犠牲者のなかに3人の日本人観光客がいました。
この事件のニュースはもちろんですが、事件後にチュニジアで行われた犠牲者追悼デモ行進にチュニジアの大統領を始め、フランス大統領、イタリア首相などが一緒に参加したようすが日本でもニュースで取り上げられました。
当時、チュニスでのんびり過ごしていた私にとっては、このテロ事件はショックな出来事でした。