この夜、私はスペインのセビリアを発って以来伸ばしっぱなしの無精ひげをきれいに剃り落としました。翌日、日本大使館に日本からの荷物が届いているか確認に行くため、さっぱりしたかったのです。
ひげを伸ばしていたのには、私なりの理由がありました。北アフリカは何かと物騒な気がして、強盗や置き引きに遭わないようにあえて薄汚い格好をしていたのです。
幸い物取りには遭いませんでしたが、逆に私が怪しいヤツと思われたようで、買い物をしようと店内を物色している私を店の従業員がピッタリとマークすることが2-3度ありました。
ひげを剃り落としたあとは寝るだけ、ベッドに横になると、先に横になっているW君に聞いてみました。
「きょうで3月も終わるけど、でどうする? 日本に帰るの?」
突然の質問に、W君は驚くようすもなく、
「それなんですけど、実はずっと考えていたんです。Hさんは、このあとリビアに行くんですよね?」
「うん、一応そのつもりなんだけど、問題はリビアの情勢が全然わからないんだよな。あした、大使館に行くから、聞いてみるつもりだけどね」
「そうですか。僕は新学期にあわせて、いま日本に帰るのがベストなんですが、正直言うと、もう少し旅を続けたいんです」
「うん、一応そのつもりなんだけど、問題はリビアの情勢が全然わからないんだよな。あした、大使館に行くから、聞いてみるつもりだけどね」
「そうですか。僕は新学期にあわせて、いま日本に帰るのがベストなんですが、正直言うと、もう少し旅を続けたいんです」
「そう、俺はいいよ。大歓迎だよ。俺が言うのも何だけど、海外旅行なんてそうそうできないし、悔いの残らないようにね。でも、肝心のお金はまだ残っているの?」
「ええ、結構節約してましたからあと2ヵ月ぐらい何とかなりそうです。前にも話しましたけど、帰りのチケットはもう確保してありますから」
「でも勝手に旅行を続ける訳には行かないよな。日本じゃ、もう帰ってくると思ってんじゃないの?」
「ええ、家族はそのつもりです。僕もそう言ってありますんで、その時は日本に連絡します。休学の延長届けも出さなくてはなりませんから」
「ええ、結構節約してましたからあと2ヵ月ぐらい何とかなりそうです。前にも話しましたけど、帰りのチケットはもう確保してありますから」
「でも勝手に旅行を続ける訳には行かないよな。日本じゃ、もう帰ってくると思ってんじゃないの?」
「ええ、家族はそのつもりです。僕もそう言ってありますんで、その時は日本に連絡します。休学の延長届けも出さなくてはなりませんから」
「資料がないから確かなことは言えないけど、地中海側に沿って走るとリビアは1,500キロぐらいあると思うんだよな。順調に行けば2ヵ月で、エジプトまで行けると思うけど」
「エジプトといえば、Hさん、ピラミッドの頂上から朝日を拝みたいって言ってましたよね?」
「うん。子どものころ、テレビでピラミッド越しに太陽が昇ってくる映像を見てさ、それがきれいだったんだよな。その印象が残ってんだ」
「へぇー、そうなんですか」
「エジプトといえば、Hさん、ピラミッドの頂上から朝日を拝みたいって言ってましたよね?」
「うん。子どものころ、テレビでピラミッド越しに太陽が昇ってくる映像を見てさ、それがきれいだったんだよな。その印象が残ってんだ」
「へぇー、そうなんですか」
「でもさ、ピラミッドの頂上で夜明けまで過ごせるかどうかは知らないよ」
「ハッハッハー。肝心なところは知らないんだ」
「オーケー。とにかく明日、大使館でリビアのこと聞いてくるよ。それからまた相談しよう」
「そうですね、そうしましょう。じゃ、そろそろ寝ますか」
「ハッハッハー。肝心なところは知らないんだ」
「オーケー。とにかく明日、大使館でリビアのこと聞いてくるよ。それからまた相談しよう」
「そうですね、そうしましょう。じゃ、そろそろ寝ますか」
W君との自転車旅もすでに3ヵ月近く経っていました。続けられるなら、もう少し一緒に走りたいとも思っていました。