丘の上の教会を過ぎてもアップダウンは続き、やがて国道83号マルカシーナ線は国道17号と合流して終わりを迎えました。
国道17号は、小さなアップダウンを繰り返しながら、下り基調が続いています。どうやら中央アペニン山脈の山々とも、きょうでお別れのようです。下る途中、名残を惜しむように、何度も振り返っては遠くなる山々を眺めていました。
アブルッツォ国立公園を後にしてモリーゼ州に入り、Isernia (イゼルニア) の街を過ぎたあたりで、キャンプになりました。この日の私の手帳には、
「本日の走行非常にハード、走行距離約50キロ、14%の勾配を含む三度の峠越え、標高差800mを下る」
そして最後に「アリベデルチ モンテ!」
山間を行く国道17号は、少し登りが続くと標高700m近いモリーゼ州の州都 Campobasso (カンポバッソ) へ。この先はひと山越えて平野部へ下るだけとなります。
突然、警官が現れる
カンポバッソの街は、丘の上の旧市街に教会を始め中世の街並みが残されており観光地でもあるようですが、私たちは街を素通りして郊外の川沿いにキャンプを。テントを張り終え、夕飯の支度を始めると突然対岸から大きな声が聞こえてきました。
「ポリツィーア(警察)だ! お前たち何者だ? ここでキャンプはダメだぞ~ッ」
「ソーノ・ツーリスタ・ジャポネーゼ!」
対岸に私服の警官(?)が二人、驚いたことに手には自動小銃を持っています。
〔ほんとに警官なの?そっちの方が怪しくない?〕近隣で何かあったのでしょうか、それとも私たちを見た誰かが怪しいと思い通報したのでしょうか。
「一人か?」
「いや二人で~す」
「もう一人を呼べ!」
「お~い。W君、お巡りだ!」
近くでタキギを拾っていたW君は、警官とのやり取りが聞こえていたようです。
「明朝出発しますから、今晩だけお願いしま~す」
「そうか。よ~し、わかった。気を付けろよ!」
「ハ~イ、ありがとうございま~す」
川を挟んでの警官とのやり取りはこんな調子でした。予期せぬところにテント、しかもいたのは東洋人、ひょっとしたら驚いたのは警官のほうかもしれません。