朝、テントから這い出すとエリックさんのプジョーのワンボックスカーはありませんでした。ご夫婦はすでに出発したようです。その代わり(?)テントの脇に置き手紙が「昨日の夜は楽しかったよ。日本に帰ったら手紙をくれんか」、エリックさんの住所も書かれています。私はすぐに手帳にその住所を書き写しました。
帰国後、折り方の解説付きの千代紙を手紙に添えて送ると、エリックさんから返事の金属製レリーフが縫い付けられた素敵なクリスマス・カードが届きました。
[何だよ、またかよ]昨夜は星空も見えていたというのに、この日も出発する頃には雨が降りだしました。
9月10日(土)、雨の中を再び西ドイツへ。珍しいことにオーストリア以来の入国スタンプを押されました。
国境からしばらく走ったものの雨はひどくなるばかりです。屋根付きのバス停で雨宿りです。そのうち街灯も点き、辺りもだいぶ暗くなってきました。[しょうがない。野宿の場所を探さなくっちゃ]
[うん? 何ッ]再び走り始めた矢先のパンクです。暗くなる中、軒先を借りて急いでパンクの修理を終わらせましたが、結局野宿の場所探しもままならず、国境から15キロほどの Niebüll(ニービュル)の街のユース泊になりました。西ドイツには街ごとにといっていいほど多くのユースホステルがあるので助かります。
朝には雨が上がっていました。それでもいつまた降りだすかわからない空模様です。
走行中、突然「パーンッ!!」後輪からものすごい破裂音です。経験のない私にもすぐにバーストしたとわかりました。
これがその時の写真です。チューブが大きく破れ、タイヤのビード部分が裂けて鋼線が剥き出しになっていたので木綿糸でぐるぐる縫い付けました。
ちょっとした力が引き金になって破裂したようです。原因は前日の暗闇の中でのパンク修理の不手際と思われます。リム内にチューブが的確に収まらず一部ビードが噛んでいたようです。暗闇とはいえ慌てた修理した結果が最悪のバーストとなりました。「教訓…パンク修理は慌てず正確に」この日の日記に記してあります。
応急措置として、はみ出た鋼線をビード内に納めて糸で縫い合わせました。ヨーロッパ走行中にはタイヤはいつでも手に入ると思っていましたから予備のタイヤを携行していません。一方のチューブは携行しており、すぐに取り替えましたが問題は縫い合わせたビードです。恐る恐る空気を入れると[うん、大丈夫。何とか走れるそうだ]。
バーストが起きたこともありこの日の走行距離は70キロほど。Heide(ハイデ)の街の手前で野宿、時刻は8時になっていました。
バーストですが、私は自転車に乗って60年経ちますが後にも先にも未だにこの1回のみです。