前回はコミュニケーションが取れないがための消化不良な思いを伝えましたが、少ないながらも記憶に残っていることもあります。
ノルマンディーではホタテの話をしましたが、大西洋からイギリス海峡そしてノルマンディー近海と、みな豊かな漁場です。港の魚市場や町のマルシェをのぞくと色々な魚介類がこれでもかと並んでいました。タラ、ヒラメ、カニ、エビなど日本でもお馴染みの魚介もあります。アサリによく似た貝を見つけ「こりゃ味噌汁だろ」と思ったものの肝心の味噌がありません。ここでふと思ったのですが、ワインで酒蒸しにすればよかったかもしれません。う~ん、今さらながら悔やまれます。
魚市場は朝のみ、マルシェも午前中だけのオープンです。頼めばその場で魚をさばいてくれますが、お酒を飲む私にとってのメインは晩飯、それまでナマのまま運ぶわけにもいきません。そこで加工された魚や茹でたエビなどを購入することになります。
おそらくタラの切り身の塩漬けだと思います。日本のものよりしょっぱいのですが、軽くあぶったり、少なめの水で戻して醤油と砂糖、それにワインも少しを加えて煮魚風にしていました。エビも再度ボイルし直して醤油やマヨネーズをつけてワインのツマミにしていました。そういえばフランスもスペイン同様にコーラより安いワインがありました。
自転車旅行は魚料理を食べる機会がどうしても減ります。その点、ノルマンディーは恵まれてした。
他にも身近な場所での強烈な思い出があります。
モンマルトルの一角にパリ一番の歓楽街、ピガール地区があります。そこから少し西に行くとフレンチ・カンカンで有名なキャバレー「ムーラン・ルージュ(Moulin Rouge=赤い風車)」があります。屋根の上にシンボルの赤い風車があるのですぐにわかります。
ピガール地区を横切ってムーラン・ルージュまで延びているのがクリッシー通りです。この通りはいわゆるピンク・ゾーンでストリップ・ショーにポルノショップなどがアチコチに並んでいます。驚くことに、そんな通りで派手な化粧に露出多めの娼婦たちが真っ昼間から客を物色していました。が、実はもっと身近なところでパリの娼婦たちに出会っていました。それが私がキャンプをしているブローニュの森です。
パリ観光の初日、少々帰りが遅くなり自転車のライトを点けてキャンプ場へ戻りました。[あれッ、何?]ブローニュの周回道路がちょっと変な雰囲気なんです。いや、怪しいんです。道路に多くの車が停車しており、ミニスカートや胸の大きく開いたタイトな服の女性たちがその車の横を闊歩しています。[客引きだ。娼婦だよ。いや、驚いたなぁ]粋なパリジャンもスマートなニューヨーカーも威勢のいい江戸っ子も、世界中こればっかりは変わらないようです。
彼女たちは車の中を覗き込むようにドライバーの男と何やら話しをしています。交渉中ということです。ヘルメットを外したバイクの男性も待機している一人かもしれません。彼女らの一人と目が合いました。[いやいや、俺は違うから。キャンプ場へ戻るところだから。それに自転車じゃ、さすがに来ないでしょ]
なんと周回道路がコールガール・ストリートと化しているのです。まさかブローニュの森に娼婦がいるとは思いませんでした。ここの娼婦は有名らしいのですが、全く知らなかった私にとってはかなりの驚きでした。