太魯閣峡谷の終点、目的地の天祥に着きましたが、私にはまだ行きたいところがありました。というのも来る途中で出会ったドライブ中のご夫婦から天祥の先に川沿いの露天風呂があってタダで入れると聞いていたからです。[太魯閣の秘湯か。こりゃ行かなきゃ]それが「文山(ウェンシャン)温泉」です。
[2、3キロ先っていってからソロソロだよなぁ。トンネル? おッ、あれだ]ダラダラ上りの先、トンネルの右横の小道に「文山温泉」の小さな看板を見つけました。川は道路のかなり下、温泉まで距離がありそうです。
[よし、チェックインしてからだ]ご夫婦は「トンネルを抜けた先に宿があるから、この時間からならそこに泊まったらいい」とアドバイスもしてくれていました。
トンネルを抜けてちょっと上った道路脇にその GUEST HOUSE へと入る看板を見つけました。[この上だな]フロントで聞くと「1泊240元(約1,440円)です」との返事。素泊まりでその値段ならオーケーです。
[歩き? いや、やっぱ自転車で行こう]荷物を外して自転車で行くことにしました。タオル、石鹸、着替えの下着、そして懐電灯をビニール袋に入れるとリアキャリアにゴムロープでくくりつけ、先ほどのトンネルまで戻りました。トンネル横から小道に入り、しばらく進むと急な階段が現れました。自転車をその場に置いてビニール袋片手に階段を下って行きます。
5分ほど下ったでしょうか、川音が聞こえてきました。さらに進むと眼下にそれらしい湯煙が見えますが、ヒトケはありません。[誰もいないよ。風呂と自然を独り占めってヤツか。いいねぇ]
温泉へは釣り橋を渡るようです。その手前に更衣室があります。温泉の多い台湾ですが、皆さん水着で露天風呂に入ります。その着替えのための更衣室です。[その場で脱ごう、日本人なら温泉は裸でしょ。どうせ誰もいないし]
露天風呂はコンクリート打ちされ岩風呂風になっています。畳でいうと10畳ぐらいでしょうか、川に面して並んでいます。
[あれッ、誰かいる? えッ、女性?]驚いたことにブロンドの白人女性が一人で入浴中です。上から見えない後ろ側に洞穴のような風呂があります。先ほどは人影がありませんでしたから、そこに入浴していたのかも知れません。場所が場所だけに丁寧な英語で声をかけました。
“Hello. May I join?”
“Sure, I don’t mind.”
私はタオルで前を隠して手前の風呂へそっと入りました。しばらくすると彼女の方から話しかけてきました。
「そっちのお風呂の方が熱いから。下に池みたいな穴があるでしょ。入ってみたけどぬるくてダメでした」
「ああ、川の水が入ってくるんでしょうね」
「静かでいいと思ったけど、それも初めだけ。話し相手ができて嬉しいです」
熱い温泉は後の大理石の岩の間から流れ出ています。どうやら彼女はだいぶ前から入浴しているようです。
「そうですか。よかったです。ああ、遅くなりましたが、私は日本人の旅行者です。日本人は露天風呂には裸で入ります。すいませんね、裸で」
「そんなこと気にしないで。私はカリフォルニアから来ました。一人で旅行中です」
自己紹介から始まり、お互い一人旅ということもあって話は弾みました。言いそびれましたが、彼女は水着を着ています。
混浴でしたか、いいですね。温泉は、やはり混浴でしょう。
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The woman in the hot spring might have invited you to share some more time with you. You should have noticed it.
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